朝寝て夜起きる

創作や日々のあれこれを。

無題④

別サイトに投稿していましたが、統合のためここに置いています。そのままコピペしていますので読みにくい部分があります。

 

俺が着替えを取ってきたら、珠洲さんだったものの大行進は終わっていた。
代わりに、多前門先輩の上衣が被せられていた。
珠洲さんになるであろうそれらは、のたうち回ったり鼓動しながら合わさっていった。
その間何もすることがない俺は、取り合えず、と思いキッチンで晩飯を作り始めた。
多前門先輩は見回りが残ってると言って直ぐに帰ってしまった。
帰り際に、

「明日の朝、一番にその娘をつれて風紀委員室に来い!」

と、何故か勇ましく言われてしまった。
そのあまりの迫力に了承したのは言うまでもないだろう。

まぁ、そんなことは置いといて俺は今台所に居る。
手に包丁を持ち野菜を切っている。
ザックザックと何となぁーく切るが、包丁の切れ味が悪いのか、それとも切り方が悪いのか思い通りに切れない。
何度も包丁を鋸のように前後に動かすがうまくいかない。
そのせいか、断面は壊滅的に不格好。

……………気にしない気にしない。

水を入れた鍋の中に切ったものを入れる。
どぼどぼと音をたてる水面に昔の事を思い出した。
流れても止まらず、塞いでも指の間から漏れだすソレ。
網膜にこびり付いたその記憶は時間が経っても消えることはなさそうだ。

『─────ごめんなさい…』

『─────ごめんなさいっ』

 
珠洲さん……』

チラリと珠洲さんの方を見る。
未だに先輩の上着の下から不気味な音がするので直ぐに見るのはやめた。
暫くは手羽先が食べれなくなりそうだ。
服の端から珠洲さん特有の紫がかった髪の毛が出ていた。
その髪に触れたいと思ったがやめといた。
何と無く触れたら失礼な気がした。

「ぎ、あっ………か……」

上半身は出来上がったのか、服の上から珠洲さんの体のラインが見てとれる。
それを見ながら、相も変わらずだなぁー、と思っていた。
あ、何がって質問は受け付けてないから。
別に先輩と比べて圧倒的に小さいとか無いとか思ってないから。
てか、無かったとしても俺は珠洲さんを愛せるから。
そんなもん俺と珠洲さんの間ではどうでも良いから。
気にしてないことだから。
珠洲さん、生き返ったばかりだからまだ未来あるよ。
これから大きくなれるかもしんないじゃん。
少なからず俺はその可能性に賭けてんだよ!

と、誰なのか分からない奴に弁解をしている暇に、肉の動く音が止んだ。

「荒城さん………?」

何で?

「あの、どうかなされましたか?」

「うぇ!?あ、いや何でもないです!うん!何でもない」

「………そうですか」

自分に言い聞かせるように言う彼に珠洲は顔をしかめながらも了承した。
珠洲さんがキチンと治っていて良かった。

うん。

そう思うけどさ、けどさ、何で服まで直ってんの!?