【#189】インタビュー記録
R-248は19■■年■■月■■日にY-001によって地下の実験施設より発見されました。発見当時は円筒型のカプセルに約10l保管されていました。
当初は自我を確認できず研究資料として保管する予定でしたが、運び出す際に職員が誤って1つを破損してしまい、液が流出。数秒激しく振動するとイエイヌのチワワへ変化しました。チワワは爪で床に“ありがと”と傷をつけ職員に感謝を示しました。
その後、紙とペンを要求したので職員の手持ちのメモ帳とペンを手渡すとその場で上下に飛び跳ねて喜びを表現しています。
以下がその時のやり取りです。
職員:(R-248に目線を合わせる)君の名前は何?何て呼べばいいかな?
R-248:(口にペンを咥えメモ帳に書く。字は小学生低学年ほど)2
職員:えっと、それは何て読むんだ?
R-248:つー
職員:つー、か。つーはどうしてここにいるんだい?
R-248:きみも いる 同じ
職員:俺はここじゃなくて外から来たんだ。
R-248:そと ?
職員:そう、外は広くて暖かいよ。
R-248:(首を傾げながら職員をじっと見つめる)
職員:どうかな、俺と一緒に行こう?
R-248:みんなも だめ?
職員:他の子もいるのかい?
R-248:(割れていないカプセルに目線を向ける)
職員:あの中につーの仲間がいるのか。開けれるか?(他の職員へ確認をとるが許可下りず)ごめんな、俺じゃ開けれないみたいだ。
R-248:いいよ(笑顔のマーク) みんな いる つー いく
職員:ありがとう、それじゃあ行こうか
R-248:そと いく(笑顔のマーク)
こうして職員とともにR-248は実験室より出ました。この時に出された他のカプセルはY保管庫に収容されました。インタビューを行った職員は後のY-002です。当時の詳細については彼に聞いてください。
現在は <<<開示承認待ち>>> です。
その後、Y保護区の施設内に犬小屋を設置し、一般的な犬と同じように首輪につなぎながら飼育されていました。当時は液状化する人語を理解するチワワだと思われていましたが、2か月で柴犬、5か月でゴールデンレトリバーに変化し、さらにから10か月で人間の少女へ変化しました。
R-248は10歳前後の東洋風の見た目をしています。これは現在R-248が多く使用する外見を幼くしたものです。人型の観測直後は多数の一般職員が着用する制服姿を着用した状態でした。しかし制服は人間にあたる皮膚と完全に癒着した状態であり脱がせることは不可能でした。脱がせようとした服にあたる部分を引っ張った際に、R-248はイヌの鳴き声のような声を上げ痛みを訴えたため断念しました。
この後、非公式に行われた実験にて職員が服と皮膚は癒着していないことを説明するとR-248と制服部分は分離、脱げるようになりましたが脱衣後に制服は水に変化し回収には至っていません。R-248の服の下部分は変化前の液になっており不定形状態でした。
人型に変化後、7時間にR-248へインタビュー調査が行われました。
Y保護区内の談話室にて質問者はY-012が行い、以下がその時のやり取りです。
Y-012:(入室)おはよう、はじめましてだね。私はY-012、■■■って呼んでね。
R-248:(室内に椅子に腰かけている)おはよう、■■■さん。
Y-012:今日は難でここにいるのかわかる?
R-248:ん~……(数分考え込む)ご飯食べすぎちゃったこと。
Y-012:ははは。確かに君はここに来てから無尽蔵に食べるよね!
R-248:ごめんなさい。
Y-012:怒ってないよ。そうじゃなくて、なんで君が人間になっているかが聞きたいんだ。
R-248:人間になってないよ。
Y-012:君のその姿は人間だよ。
R-248:私も、■■■さんも人間じゃない。人間はこれ。(身長170㎝代の白衣を着用した男性の姿に変化)
Y-012:こ、この人は誰なの?
R-248:人間。
Y-012:そう見えるけど、この人の名前やどんな人なのか教えて。
R-248:名前は知らない。私を生んでくれた人で、とっても強い人。何でもできるし、なんでも教えてくれた。でも私を容れ物に入れてからあってない。
Y-012:そう、その人は今どこにいるのかわからないの?
R-248:わかんない。でも生きてることだけはわかる。……でもいつかは感じなくなるから大丈夫。大丈夫だよ。
その後Y-012はR-248に対し、施設で行われた実験の内容や様子などを質問しましたが、R-248は人語を話せなくなり人型から液状へ変化したため面談は中止になりました。
R-248がインタビュー途中で変身した男性は現在も調査中ですが、素性や経歴など一切判明していません。引き続き調査を続行してください。あの施設の関係者であることは明白です。
インタビュー内容からR-248は人間の定義が男性の容姿で固定されているようです。施設が閉鎖的だったので男性以外の人間に接触していなかったのでしょう。これからは積極的にR-248と交流を持ってください。
このインタビュー以降、R-248は人型に変化することが多くなったため、収容場所は急遽一般職員寮を改修した特別収容室に変更になりました。消灯時間以外の施錠は推奨されていませんが、日中のほとんどは職員の待機室か食堂に居るようです。職員との交友関係は良好のようで、審査会にR-248が職員になれるよう打診しています。